戦後は続くよどこまでも。

朝、出勤したら諸々の書類と共に1通の手紙が置かれていました。
開けてみると、それは礼状でした。
レアな質問も多い仕事柄なため、内容によっては丁寧な礼状が来ることがあります。
今回も確かにそうだったのですが、非常に印象に残るものでした。


8月あたまに、「戦時中、父が兄弟と今生の別れをした場所が今どうなっているのか教えてほしい」という問い合わせがありました。要は出征の儀式(っていうのかね)をやった場所がうちが管理してる施設内にあって(かつては国民学校の校庭だった)、それがだいたいどのへんなのかを教えてほしいということでした。Fさんと共に当時の資料を探したり学芸員さんに電話したりとあれこれ調べて、ようやく目星をつけた場所を地図にチェックして、FAXで送りました。
それから数日後、その地図を頼りに、わざわざ遠いところから車でいらしたそうです。当然、お父様を連れて。
死ぬ前に、戦火に散ってしまった兄弟との別れの場所にもう一度行きたい……と望まれていたそうです。
無事、その場所に辿り着いた時、お父様は涙を流されたそうです。
手紙にはそのいきさつと一部始終が書かれており、最後はこう結ばれていました。
「これで父の戦後が終わったとは思いませんが、少しでも心が晴れたのではないかと思います」
「戦後は終わらない」……当事者にしか分からない、重い言葉です。
こんな手紙をこの日に見るなんて、何とも因縁めいているな…と思いつつFさんに見せたら、Fさんも全く同じことを言っていました。むしろこの日に見るからこそ意味があるんだよ、とも。
何十年経っても、たとえ何百年経って戦争を実際に知る人がいなくなったとしても、忘れてはならないことなんだな……と、心底思いました。言葉にすると薄く聞こえてしまうことが面映いですが……


実感することでしか伝わらないものは、世の中にたくさんあります。きっと、わたしたちが思う以上に。