一件小事

雨音響く夜、静寂を破って鳴り響く電話のベル。
「こんな時間に…?」ためらいがちに受話器を取ると、受話器の向こうからもためらいがちの声が響く。
「……ここあさんいますか?」
「……私ですけど?」
受話器越しの緊張が一気に解けるのを感じた。どうやら私かどうか確証が持てなかったらしい。
電話の主は……期せずして、私も声が聴きたいと思っていた人だった。廊下ですれ違うたびに疲れた心が癒されて、姿を見かけるたびに話を聞いて欲しいと思っていた人。
声がワントーン高くなりそうになるのを辛うじて押さえながら、話を続けると……








「あのさあ、こないだもらったステッカーの文字なんだけど……」
「あ、あはははは(汗)、すいません、実はかくかくしかじかで……」
「ははは(笑)。いや、気づいてると思ったんだけど、たまたま引き出し開けて見たらそうなってたから」
「すいません、ホントに……」


何のことはありません、電話の相手は前の係長です。
彼から引き継いだ仕事の成果物(シール)が出来上がったのですが、肝心かなめのところでミスがありまして。対応策はもう打ってたけれど、彼に報告はしてませんでした……が、やはりバレたか(笑)。
まあオープニングほどのドキドキ感があったら怪しいですが、久々に前係長としゃべれて嬉しかったっす。会議準備等で疲れた体が癒されました♪




さて、明日は会議前日で最大の山場ですよ。印刷作業にいそしみます。