「トランス」youth&elderバージョン

千秋楽のため、両バージョンで大入り袋いただきました。
朝日のような夕日をつれて」とタメはるくらい大好きなこの演目。わたしの中では初演ビデオの印象が全てだったので、他の役者さんがやるとどんな感じになるのかしら……というのが焦点だったのですが、なんやかんやでひとつひとつのセリフに心をえぐられました。
「私は他人である」
「私は何が正常で何が異常かを分類することはできます。ですが、何が妄想で何が真実かを分ける方法は知らないのです」
「事実は存在しない、ただ解釈だけが存在する」
「私には、愛するという確信はない。しかし、救済という確信はあるのだ」
「愛なんて、そもそも妄想みたいなものでしょう」
「どこかへ行きたいんだけど、それがどこか分からないって思うことはないかい?」
「私の想像力が、私の噂を完璧にするのよ」
「想像力だけが人を傷つける」
「あなたの側にわたしがいること、わたしの側にあなたがいること、全てはそこから始まるのです」
ストーリーの整合性がどうとかオチがどうとかより、これらの言葉たちこそがこの芝居の意義ではないかと思うんです。3人の姿を通して、現在の自分を照らし合わせるんです。自分も「正常」と「異常」の境界を彷徨ってるのではないか、「愛情」だと思っているけれど所詮は「妄想」なのではないか……人は皆、2つの対極に位置するものの境界を生きている、それこそが「トランス」というタイトルの持つ意味ではないか、と勝手に解釈しております。
youthもelderも、それぞれに味のあっていいものでした。youthの方が即物的(セットが象徴的)で、elderの方が演出はより初演に近いかな、と。ただ演じ方は小須田さんの日記にあるとおり、youthの方が初演っぽかったかもしれません。elderは役者さんの個性が垣間見れて楽しめましたけどね。それでも、初演がちらつくのは致し方なし。小須田さんの演じ分けがいかに見事だったかを思い知らされましたよ……
役者さんは6人6様印象的でしたが、瀬川さんはカッコ良かったし、みのすけさんには和みました。高橋さんは将来大物になるかも。